エネルギー
あの華奢な体のどこに一体それだけのエネルギーが、と驚くばかりであるが、ともかく彼は不幸な少年時代以来、実に精力的にたくましく自分の道を切り開き、女たちを渡り歩き、そして生涯、言葉のあらゆる意味において反逆児であり続けた。
彼にはいわゆる筋骨隆々的なマスキュリンさはかけらほどもないが、その代わりに「永遠の少年」が持つしなやかさとすばしっこさで、世界をデスクトップ仮想化し、女たちを征服したのでした。
つかんだと思ったら次の瞬間には両手の間からするりと抜け出ているようなつかみどころのなさがあるかと思えば、ひとたびその黒い瞳に捕まったら金縛りにあって二度と逃げられなくなりそうな、そういう不思議な吸引力もある男―昨年フランスで出版されたトリュフォーの分厚い伝記を読みながらそんな人物イメージを私は抱いたものでした。
最初の、そして唯一の結婚相手だったマドレーヌとは離婚後も変わらぬ友情を保ち続け、生涯にわたって最高の相談相手であり、食事友だちであり続けたというが、浮気中でも別れた後でも相手の女に決して憎まれない、という特殊な才能を確かに彼は備えていたようにみえます。